A Fickle Child Psychiatrist

ー移り気な児童精神科医のBlogー

自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害

ツイッターに下記の二つのツイートをしたところ思った以上の反響がありました。

二つ目のツイートのシェーマはこれまでの議論の歴史的経過を大雑把に示したつもりなのですが、なかなか議論も複雑なところなので、ブログの記事に起こしてみることにしました。

 

 この記事を読む前に大事な注意事項を一つ。本当は自閉スペクトラム症も統合失調症のグループの障害も、歴史的には細かく細分化され、ここで紹介している研究もそれぞれ扱っている対象が少しづつ異なっているのですが、読者の方の混乱を避けるために、この記事の中に限って、ほとんどを自閉スペクトラム症、統合失調症スペクトラム障害*1に統一してしまっています。それぞれの研究の詳細についてはリンク先の論文などで確認してください。

 

*1:最近では統合失調症とその類縁疾患もスペクトラムを呈すると考えられています。参考記事

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子どものADHDと大人の「ADHD」 —ダニーディンのコホート研究から—

 このツイートに対する反響が思ったより大きかったので、ちょっと記事にまとめてみます。

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心理職国家資格化 法案提出への動き

最近の動向

 久々に心理職の国家資格化の件について大きな動きがありました。また国会への上程が視野に入るような状況になってきているようです。今回(?)の動きについて、ごくごく簡単にかいつまんで並べてみます。
 
平成23年10月2日
3団体(臨床心理職国家資格推進連絡協議会:22団体、医療心理師国家資格制度推進協議会:25団体、日本心理学諸学会連合:45団体)による要望書提出。
 
平成25年4月1日
 
平成25年9月吉日
日本心理研修センター、国家資格化に係る『試験・登録機関』に指定されることを要望
 
平成25年9月19日
精神科七者懇談会より『心理職の国家資格化に関する提言』。
 
平成26年4月21日
『心理職の国家資格化を推進する議員連盟』会長、衆議院議員河村建夫氏が、5月中の法案提出を目指す旨をFacebookページで公表。
 
 大ざっぱにはこんなまとめでよいでしょうか。なんとか今回こそ法案成立までたどり着いて欲しいところです。以下に少し私見を述べてみます。

Book Review 『明日からできる大人のADHD診療』

奈良市にある「きょう こころのクリニック」の院長、姜昌勲先生から、新刊をご恵送いただきました。どうもありがとうございました。現在はまだ予約注文しかできないようですが、近日中に発送が始まりそうです。

明日からできる大人のADHD診療

明日からできる大人のADHD診療

 

 成人のADHDに関する書籍は多数出版されていますが、診療を行う医師を対象としたものはまだそれほど多くありません。この本は成人を中心に診療を行ってきた精神科医による、おそらくは主にクリニックでの臨床を想定して構成されています。本書はまた医師以外の支援者にとっても、質の高い医療機関でどのようなサービスが提供されるのかを知ることができる内容となっています。

 

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WHODAS 2.0 ーDSM-5における「V軸」の扱いの着地点ー

DSM-5 公開版に基づく記事の第2弾です。ひょっとするとADHDなどを取り上げることを期待しておられた方がいるかもしれませんが、それはきっと誰かが書いてくれそうなので、先になかなか誰も触れてくれなさそうな部分をご紹介します。

 

以前、このブログで DSM-5における「V軸」の扱いー国際生活機能分類(ICF)への接近?ー という記事を公開しました。詳細はこの記事を見ていただくのがよいと思うのですが、多軸診断を採用していた DSM-IV では、機能の全体的評定として、第V軸を位置づけ、GAF (Global Assessment of Functioning)尺度が用いられていました。実はこのGAF尺度による評価は、日本でも診療報酬制度の中で重症度判定に用いられており、経営的な観点からも重視されるというちょっと奇妙な現象も生じていました。

 

今回のDSMの改訂にあたって、前記の記事のように多軸診断は廃止されました。では従来第V軸で評価されていた内容は最終的にどのように位置づけられたのでしょうか。DSM-5 の Section III の冒頭が Assesment Measures という項目なのですが、この中に Cross-Cutting Symptom Measures と並んで WHO Disability Assessment Schedule 2.0 (WHODAS 2.0) が掲載されています。

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DSM-5における「V軸」の扱いー国際生活機能分類(ICF)への接近?ー

2013年5月の刊行を目指して、アメリカ精神医学会により精神疾患の診断、統計のためのマニュアルである DSM-5 の開発作業が進められています。この中で機能評価に関わる部分も大きな改訂が行われるようです。

 

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