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A Fickle Child Psychiatrist

ー移り気な児童精神科医のBlogー

アメリカにおける自閉症スペクトラム障害を持つ学童の実態調査

Neurodevelopmental Disorders

非常に興味深いレポートが、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)から公開されていました。

 

特別なヘルスケアニードを持つ学齢期の自閉症スペクトラム障害児童の診断歴と治療

Diagnostic History and Treatment of School-aged Children with Autism Spectrum Disorder and Special Health Care Needs 

 

アメリカの自閉症スペクトラム障害の現在の姿がよく見て取れる貴重な調査だと思います。これに対応するような日本の調査があると、すぐに比較できてよいのですが、これだけ包括的な調査は残念ながらすぐに思い当たりません。

 

このレポートは National Survey of Children with Special Health Care Needs (NS-CSHCN)という大規模な調査のデータを用いて作成されています。CSHCNは次のような子どもとして定義されています。

 “those who have or are at increased risk for a chronic physical, developmental, behavioral, or emotional condition and who also require health and related services of a type or amount beyond that required by children generally”

つまり単に診断を受けているだけではなく、特別な援助が必要な子どもということになりますね。このレポートではCSHCNに該当する子どものうち、自閉症スペクトラム障害を持つとされる子どもだけを抜き出して分析しています。対象となっているのは6歳から17歳の子ども、1,420人です。それではレポートの項目を一つづつ見てみましょう。

 

1. はじめて診断を受けた年齢

図1 にグラフが示されています。約半数の子どもは4歳までに診断を受けていますが、5歳で診断を受けた子どもが11.5%、6歳を越えて診断を受けた子どもが39.9%います。これは日本でもそれほど変わらないのかな、と思いますが、地域差の大きいところかもしれません。

 

2. 誰から診断を告げられたか

これが非常に興味深いデータになっています。図2 にグラフがありますが、診断時期が0〜4歳の場合で7.9%、5歳以上の場合でも23.9%と精神科医の比率がかなり低いのです。神経科医や発達小児科医などをあわせた専門医全体でも半数にはならないようです。残りの子ども達は一般小児科医や家庭医、ナースプラクティショナー、心理士などによって診断を伝えられています。

日本でも子どもの心の診療医の少ない地域では、実質的に医師以外の職種から診断が告げられていますが、アメリカもそれに近い実態のようです。確かに精神科医が診断の主要な担い手になることはやはり現実的ではないような気がします。

 

3. 現在受けているサービス

図3 に示されています。自分が思っていたよりも行動療法的介入を受けている子どもの数が少ないのですが、それでも40%程度の子どもが利用しているようです。低年齢の子どもでは次いで作業療法、ソーシャルスキルトレーニング、言語療法の順に多くなっています。年齢が上がるとソーシャルスキルトレーニングを受けている子どもが一番多くなっていますが、これは理解しやすいですね。このうち3つ以上を組み合わせて利用している、という子どもが6〜11歳で61%、12〜17歳で47%もいるのは驚きです。おそらく学校で利用できる場合が多いのではないかと思います。

 

4. 向精神薬の服用状況

図4 です。何らかの向精神薬てんかんの治療薬も含む)を服用している子どもは56%に昇っています。これを多いと見るか少ないと見るか、難しい所だと思います。最も多いのは精神刺激薬(ADHD治療薬)の31.6%ですが、アメリカではすべての子どものうち5%程度はこのグループの薬を服用しているようですので、この数字が多いかどうか、判断に迷います。自分の周囲で治療を受けている日本の自閉症スペクトラム障害の子どもでは、ADHD治療薬を飲んでいる子はこれほどの割合ではいないと思います。日本とはかなり事情が違うようです。

意外なのは抗精神病薬服用の相対的な少なさです。アメリカではリスパダールエビリファイの2種類の抗精神病薬は、正式に自閉症スペクトラム障害の子どもに対する適応が認められています。なのでもう少し高い割合の子どもが飲んでいるのではないかと思っていましたが、14.0%に留まっています。それでも日本よりは高い割合で投与されているようには感じますが。

 

これだけ見てくると、アメリカの自閉症スペクトラム障害の子どもの姿が少し想像したやすくなったように感じます。皆さんの周りの子ども達と比べて、いかがでしょうか。