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A Fickle Child Psychiatrist

ー移り気な児童精神科医のBlogー

Book Review 『明日からできる大人のADHD診療』

奈良市にある「きょう こころのクリニック」の院長、姜昌勲先生から、新刊をご恵送いただきました。どうもありがとうございました。現在はまだ予約注文しかできないようですが、近日中に発送が始まりそうです。

明日からできる大人のADHD診療

明日からできる大人のADHD診療

 

 成人のADHDに関する書籍は多数出版されていますが、診療を行う医師を対象としたものはまだそれほど多くありません。この本は成人を中心に診療を行ってきた精神科医による、おそらくは主にクリニックでの臨床を想定して構成されています。本書はまた医師以外の支援者にとっても、質の高い医療機関でどのようなサービスが提供されるのかを知ることができる内容となっています。

 

 

 

医師向けの書籍は概して教科書的に、病因や病態生理、疫学などから説き起こすお行儀のよいものが多いのですが、本書ではそうした部分の詳細はあえて他書に譲り、極めて実践的な切り口で書かれています。特に『第5章 ADHD臨床の具体的な進め方』『第7章 ADHD治療のためのクリニック経営ノウハウ』などは、身内以外にはなかなか語られることの少ない貴重な内容になっています。初診おおむね30分、再診5分というクリニックの臨床では、診療の質の保証という点でも、診療報酬体系との整合性の点でも、現実的な設定の中でのノウハウが惜しみなく提供されています。

 

本書のもう一つの特徴は、「筆者自身も顕著なADHD特性を有している」という自己診断のもと、筆者のエピソードもふんだんに紹介されていることでしょう。また本書の構成自体がよい意味でADHD的な展開となっているため、読んでいるだけで大人のADHD臨床にどっぷりつかった気分になってしまいます。これは姜先生ならでは、というところでしょうか。

 

成人期の発達障害について、一般の精神科医からも診療の具体的な方法を知りたいというニーズが高まってきています。宮岡先生と内山先生による『大人の発達障害ってそういうことだったのか』という書籍もやはり具体的な内容で、非常に評価が高かったのですが、どちらかと言えば自閉症スペクトラムに軸足がおかれていました。「明日からできる大人のADHD診療」と併せて読んでいただくと、成人の発達障害臨床のより幅広いパースペクティブが得られるかもしれません。

大人の発達障害ってそういうことだったのか

大人の発達障害ってそういうことだったのか

 

コンサータの成人への適応拡大の時期も近づいてきているようです。本書の出版を一つの契機として、成人のADHD臨床に取り組んでいただける医療機関がさらに増えていくことに期待します。