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A Fickle Child Psychiatrist

ー移り気な児童精神科医のBlogー

DSM-5における反応性愛着障害の扱い

Child Psychiatry

2013年5月の刊行を目指して、アメリカ精神医学会によりDSM-5の開発作業が進められています。その中で、DSM-IV-TRで反応性愛着障害(Reactive Attachment Disorder of Infancy or Early Childhood)として取り上げられていた障害の扱いが、大きく変わっています。

 

最大の変化は、従来の反応性愛着障害の抑制型と脱抑制型が分割されて、二つのカテゴリーとなっている点でしょう。抑制型は Reactive Attachment Disorder (RAD) となり、脱抑制型は Disinhibited Social Engagement Disorder (DSED)  に発展しています。

 

両方のカテゴリーともに心的外傷などに関連する Trauma- and Stressor-Related Disorders に分類されています。DSM-IVでは反応性愛着障害は「通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害」(Disorders Usually First Diagnosed in Infancy, Childhood, or Adolescence)に分類されていましたが、DSM-5ではこの分類そのものがなくなっています。反応性愛着障害が外傷関連の大分類に収まっているのは、自然な流れですね。

 

またそれぞれの障害とも、DSM-IV-TRではあっさりと書かれていた症状が、かなり具体的に定義されています。かなり障害の様子を想像しやすい基準になっているように感じます。それぞれの障害を引き起こす要因となっている養育 ( Pathogenic care ) にもいくつか項目が付け加えられています。

 

Reactive Attachment Disorder の診断基準では以下の4つが挙げられています。

D.   Pathogenic care as evidenced by at least one of the following:

1)     Persistent disregard of the child’s basic emotional needs for comfort, stimulation, and affection (i.e., neglect). 

2)     Persistent disregard of the child’s basic physical needs.

3)     Repeated changes of primary caregiver that prevent formation of stable attachments (e.g., frequent changes in foster care).

4)     Rearing in unusual settings such as institutions with high child/caregiver ratios that limit opportunities to form selective attachments.

このうち1から3番目の項目は、おおむねDSM-IV-TRのものと共通していますが、4番目の項目で、養育者の少ない施設などは pathogenic だとはっきり示されています。日本の乳児院、児童養護施設などの人員配置だと、おそらくこの項目を満たすことになるのでしょうね…。さらに Disinhibited Social Engagement Disorder でもおおむね似通った4つの項目が挙げられていますが、もう一つ異なった内容が入っています。

3)     Persistent harsh punishment or other types of grossly inept parenting.

 ここには繰り返される体罰などが含まれるのでしょうか。
 
もう一点、RADと診断する場合には、自閉症スペクトラム障害を除外することが求められています。理論的にはこれでよいと思うのですが、実際の臨床では迷う場面が出てくるかもしれません。一方DSEDでは、
 B.   The behavior in A. is not limited to impulsivity as in ADHD but includes socially disinhibited behavior.
となっており、ADHDの並存を必ずしも否定していません。 このあたりは臨床感覚によくあっている感じがします。
 
全般にかなり定義が明確になっているので、典型的なケースは確実に診断できるようになりそうです。そのぶんこぼれ落ちてくるケースも出てくるのかもしれませんが。