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A Fickle Child Psychiatrist

ー移り気な児童精神科医のBlogー

DSM-5 での注意欠如多動性障害(ADHD)の取り扱い

DSM-5関連記事の第3弾です。今回は注意欠如多動性障害(ADHD)を取り上げてみたいと思います。以前草稿の段階で,下の様な記事を書きました。

DSM-5 DRAFTでの注意欠陥多動性障害の取り扱い

公開された版でどのようになっているか、確認してみました。

まず最大の変更点と言えるのは、分類カテゴリーの移動です。DSM-IV-TR ではADHDは、反抗挑戦性障害や行為障害とともに Disruptive Behavior Disorder (破壊的行動障害)という、なかなかなネーミングのカテゴリーに入っていました。これが DSM-5 では、自閉症スペクトラム障害などと同じ Neurodevelopmental Disorder (神経発達障害)というカテゴリーに入ることになり、日本の臨床家にとっては馴染みやすいところに落ち着いたと言えるでしょう。一方で Disruptive Behavior Disorder は Disruptive, Impulse-Control, and Conduct Disorder と名前を変えて存続しています。

 

その他、主な変更点は

  • 発症年齢の引き上げ(7歳以前→12歳以前)
  • 自閉症スペクトラム障害との並存を認めるようになった
  • 混合型、不注意優勢型などのサブタイプの廃止。代わりに過去6ヶ月間の症状の現れ方として、 Combind Presentation(混合状態), Predominantly Inattentive Presentation(不注意優勢状態), Predominantly Hyperactive/Impulsive Presentation(多動性/衝動性優勢状態)として特定する
  • In Partial Remission (部分寛解)の状態を設ける
  • 重症度を3段階に評価する

といったところでしょうか。発症年齢の引き上げにはどうにも同意しがたいところはあるのですが…。部分寛解という状態が specifier として用意された ことはよかったと思います。成長とともに該当する診断項目数自体は減ってきても、依然として適応の難しさが残り、支援や薬物療法を必要とするケースも珍しくないからです。

 

草稿で検討されていて、変わりそうで変わらなかった点としては

  • Restrictive Predominantly Inattentive(不注意限局型)は採用されなかった
  • 成人の診断基準は項目数を減らしたりせず、小児と同じものを使うことになった(すみません、この部分を読み落としてました。成人の場合、診断に必要な項目が小児の6項目から5項目に減らされています。)
  • 不注意、多動/衝動性の診断項目数は増えなかった(内容はあちこち修正された。必要項目数も6項目のまま)。

といったところでしょうか。成人に小児と同じ基準を適用するかどうか、という点は今後も引き続き議論がなされていくところでしょう。

 

全体の印象としては、もう少し大きな変化がありそうだったのが、意外に保守的に落ち着いたという感じです。発症年齢の上限の引き上げについては、日本ではほとんど無視されるのではないでしょうか。自閉症スペクトラム障害との並存が公式に認められたことで、日本でも 医師による診断のばらつきが若干減ってくることになるのではないかと思いますが、それ以外には大きな影響はなさそうに思います。

 

あといわゆる ADHD (Attention Deficit/Hyperactivity Disorder) の他に、Other Specified Attention Deficit/Hyperactivity Disorder と Unspecified Attention Deficit/Hyperactivity Disorder という診断が用意されています。日本の日常臨床では滅多に使われないでしょうけど。

 

(注)訳語は全てとりあえず仮訳です。いずれ日本語版が出たら修正します。