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A Fickle Child Psychiatrist

ー移り気な児童精神科医のBlogー

自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害

Neurodevelopmental Disorders General Psychiatry Child Psychiatry

ツイッターに下記の二つのツイートをしたところ思った以上の反響がありました。

二つ目のツイートのシェーマはこれまでの議論の歴史的経過を大雑把に示したつもりなのですが、なかなか議論も複雑なところなので、ブログの記事に起こしてみることにしました。

 

 この記事を読む前に大事な注意事項を一つ。本当は自閉スペクトラム症も統合失調症のグループの障害も、歴史的には細かく細分化され、ここで紹介している研究もそれぞれ扱っている対象が少しづつ異なっているのですが、読者の方の混乱を避けるために、この記事の中に限って、ほとんどを自閉スペクトラム症、統合失調症スペクトラム障害*1に統一してしまっています。それぞれの研究の詳細についてはリンク先の論文などで確認してください。

 

同じ?

 世界最初の児童精神科医(?) Kanner が、1943年にはじめて早期幼児自閉症を報告して以来、自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害が同じものであるのかどうかについて、熱心な議論が戦わされました。そもそも「自閉」という名称自体もともとは統合失調症の症状を示す用語が語源になっています。当初 Kanner 自身が自閉症と統合失調症の関連を不明確なままにしていたこともあって、当時の研究では両者は同一のものと考えられていた時期もありました。この時期の状況についてはこちらのブログ記事も参考になるかと思います。

 

違う

 その後1960年代にイギリスの超大物児童精神科医 Rutter は1967のこの論文から始まる自閉症児の予後調査を通じて、統合失調症とは区別すべきであるとの考えを示しました。1970年代に入るとKolvinらによる詳細な研究等を通じて、両者は明らかに異なるものと考えられるようになってきました。こうした研究の成果をうけて、1980年に出版されたアメリカ精神医学会による精神疾患の診断分類体系である DSM-III では自閉症は広汎性発達障害という名称で呼ばれ、統合失調症からははっきりと区別され、「統合失調症におけるような妄想・幻覚、連合弛緩、滅裂が存在しないこと」という除外規定が設けられました。

 

併存する?

 その後の診断基準ではまたある種の揺り戻しが起こります。1987年に公表されたDSM-III-Rでは、広汎性発達障害は第2軸の障害に分類され、上記の除外規定は削除されました。つまり第1軸の代表的な疾患である統合失調症とは別の軸にある疾患で、併存することを否定しないという立場に変化した訳です。

 この時期には自閉スペクトラム症と統合失調症の区分が明確となってくる過程と並行して、知的な発達に遅れのない、いわゆる高機能のグループが、障害の理解や研究の観点からも、また支援のニーズの点からも、注目を集めるようになってきました。そしてその一部にはっきりした統合失調症と診断できるケースがあることもわかってきました。

 こうした中、1994年の DSM-IV およびその後の DSM-IV-TR では広汎性発達障害は再び第1軸に移されましたが、統合失調症の診断においては「自閉性障害や他の広汎性発達障害の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が少なくとも1ヶ月(治療が成功した場合は、より短い)存在する場合にのみ与えられる」との規定がなされ、合併の基準がより明確化されました。これは後の DSM-5 まで引き継がれています。

 なおアスペルガー障害の診断基準には「他の特定の広汎性発達障害または統合失調症の基準を満たさない」との項目がありましたが、2000年の DSM-IV-TR ではアスペルガー障害の発症が明らかに先行する場合、診断が併記されるかもしれないと付言されています。このように最近のアメリカ流の操作的診断基準では、広汎性発達障害と統合失調症は別の診断カテゴリーに属し、合併があり得るものとして扱われているのです。そして2013年に公開された現行の DSM-5 では、従来の広汎性発達障害は自閉スペクトラム症として整理されましたが、診断基準の除外項目の中にはやはり統合失調症は明記されていないのです。

 

併存しやすい

 以前より、自閉スペクトラム症の経過についての報告の中に、統合失調症スペクトラム障害の発症が記載されている報告が時に見られていました。最も古いものとしてはアスペルガー症候群の名前の元になった Asperger 自身が1944年に報告した200例のうち、明確な統合失調症の出現は1例であったとしています。その後も多くの臨床家が経験した事例の中に、現在でいうところの統合失調症スペクトラム障害の出現が見られたことを報告しています。

 

 最近では自閉スペクトラム症を持つ人における統合失調症スペクトラム障害の発症率などについて、より体系的な報告がなされるようになってきました。非定型自閉症を対象とした30年以上の長期間のフォローアップ研究では、33.4%もの症例で統合失調症スペクトラムの障害の合併が見られた時期があったとされています。これはいくら何でも多すぎるのではないかと筆者は思うのですが、他の報告でも統合失調症スペクトラム障害の有病率は10.1%であったとされています。

 またスウェーデンの大規模なコホート研究からは、ASDを持つ人の統合失調症スペクトラム障害のオッズ比*2は4.6と報告されており、なかでも知的障害を伴わない群ではそのオッズ比は5.6に上昇するとされ、これはかなり高い頻度で起きると言えます。

 

 一方で統合失調症の視点から見た場合、特に12歳より前に発症する統合失調症(Childhood-Onset Schizophrenia: COS)に先行して、なんらかの発達の偏りがみられるとする報告が多くみられています。Rapoportらは児童期発症の統合失調症に関する素晴らしいレビューの中で、そうした症例の30〜50%で、統合失調症の発症に先行して自閉スペクトラム症の存在が認められているとしています。このように最近ではいろいろな方向から、併存しやすさが確かめられているのです。

 

似ている?

 さらに近年では自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害の両者に、様々な共通点があることがわかってきています。これこれは少し古い論文ですが、この中でも認知機能測定、脳の画像研究、機能画像研究などのいろいろな研究において、両者の間に共通する所見が存在することが指摘されています。

 また以前には自閉スペクトラム症の子どもの家族には、統合失調症の人は多くはないと言われていましたが、最近の研究はそれを否定しています。例えば自閉症スペクトラム障害の子どもを持つ親に見られる統合失調症のオッズ比は母が1.9、父では2.1であったと報告されています。逆の方向から見て、家族に統合失調症が見られた場合の子どもの自閉スペクトラム症のオッズ比が、親の場合で2.9、きょうだいの場合で2.6であったという研究もあります。

 また今では極めて多くの遺伝子が自閉スペクトラム症の発症と関連している可能性があることがわかっています(参考リンク)が、その中に統合失調症や他の精神疾患と共通するリスク遺伝子が、多数あることもわかってきています

 

 今回の記事のきっかけになった研究は、死後の脳の組織での遺伝子の発現の状況をトランスクリプトーム解析という方法で調べたものですが、自閉スペクトラム症と統合失調症のグループの間に類似点が見いだされたとしています。この流れの中では、不自然ではない結果といえるでしょう。

 

 ぐるっと回ってきて、今更という感じですが、自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害はその症状もとてもよく似ています。もしそもそも似ていないのであれば、最初から同じか違うかなどということが、精神医学上の大論争にはならなかったでしょう。

 そして日本で自閉スペクトラム症(の易刺激性)に対して適応が承認されているリスペリドン(リスパダール)と適応追加申請中のアリピプラゾール(エビリファイ)、そして大昔になぜか自閉症の適応が承認されているピモジド(オーラップ)は全てもともと統合失調症スペクトラム障害の治療薬です。

 

 また最近では自閉スペクトラム症の人が統合失調症と誤診され、必ずしも必要ではない投薬を受けているということが、批判されたりしています。これは一つには精神科医全般の技量の不足の問題とも言えますが、逆に両者がそれだけ見分けにくいということの傍証ともなります。少し古い論文ですが、ある日本の精神科の単科病院において、徹底的に診断の見直しを行ったら、少なからぬ数の自閉スペクトラム症(疑い)症例を見つけることができたという、極めて興味深い論文も発表されています。

 

 この似ているという点に着目して、統合失調症の症状のディメンジョン(評価軸)を借りて、自閉スペクトラム症の症状を記載してみようという試みをしているグループもあります。その一例が下記のようになります。

f:id:AFCP:20160614232340j:plain

 

 最近では精神疾患そのものをカテゴリーではなく、ディメンジョンで記載していこうという試みがなされており、その代表的なプロジェクトはアメリカのNIMHが進めている RDoC ということになります。これは全ての精神疾患を共通する極めて多数のディメンジョンで評価、記述していこうとする野心的なプロジェクトですが、こうした方向で進んでいくと、自ずから自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害は共通するディメンジョンで語られることになってきます。その時、我々の目にどのような風景が見えてくるのか、極めて興味深いところです。

 

似ていても不思議はない

 実は統合失調症スペクトラム障害に限らず、多くの精神疾患と自閉スペクトラム症は案外似ています。それを理解しやすくするための一つの模式図がある論文に掲載されていました。ちょっと古いのですが、まだまだ通用する考え方だと筆者は思っています。

http://d34jb20qqe27k2.cloudfront.net/content/bjprcpsych/196/2/92/F1.large.jpg?width=800&height=600&carousel=1

 

 

 この図で示されたある遺伝子の変異は、複数の生物学的なシステム(例えばドパミンの合成とかセロトニンの運搬とかオキシトシンの分解とか)を経て、複数の神経学的モジュール(例えば視覚処理とか運動企図とか社会的動機づけとか)に影響を与えます。

 そしてそれぞれのモジュールの働きの変化は複数の症状の領域(気分症状、統合失調症の陽性、陰性症状、認知症状)などに影響を与え、結果としてそれぞれの疾患(気分障害や統合失調症、自閉スペクトラム症に知的能力障害)として現れてきます。

 

 このように考えると同じ遺伝子の変異が複数の疾患のリスクとなりうること、複数の疾患の症候が似ていることが理解しやすくならないでしょうか。

 

 最近では統合失調症は出生前後からの神経発達の障害であると考えられることも多くなっています。これを神経発達障害仮説と言いますが、この仮説は研究を通じて、どんどん説得力を増しており現時点では定説と呼んでもいいのではないでしょうか。

 出生前後からの神経発達の障害という点では、当たり前ですがいわゆる発達障害と共通しています。統合失調症も発症に先行する神経発達の偏りがあり、思春期前後にひとりでに、あるいは何らかのストレスを契機に発症すると考えられるようになっているのです。

 

 このように複雑な自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害の関係、特にその併存という現象をどのように考えればよいのでしょうか。Chisholmらは両者の併存について既存の研究のレビューを行って整理を試みています。これは非常に面白い論文なので、この領域に関心のあるかたはぜひ一度お読みいただくとよいのではないかと思います。

 彼らは両者の併存について8つの理論的モデルを想定し、そのうち以下の4つのモデルについて現時点で比較的豊富なエビデンスがあるとしてます。

 

1) The ‘increased vulnerability’ model

自閉スペクトラム症があることで、統合失調症スペクトラム障害の発症リスクが上昇するために併存しやすいとするモデル

 

2) The ‘associated liabilities’ model

両者に共通するリスク因子があるために、併存しやすいとするモデル

 

3) The ‘diametrical’ model

共通するリスク因子に対して、例えばPrader–Willi症候群 と Angelman 症候群に見られるような異なった機序の遺伝子刷り込みなどに類似した、対立的な変化が生じることによって生じるとするモデル

 

4) The ‘multiple overlapping aetiologies’ model

自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害はそれぞれ「スペクトラム」と表現されるように、内部での異質性の高い症候群であるので、互いに一部の病理が重複している群がありうるとするモデル

 

 現時点ではいずれか一つのモデルによって、全ての併存事例を説明できるような状況ではもちろんなく、おそらくそれぞれの事例によって、より妥当であるモデルは異なるものであるのかもしれません。今後の研究が待たれるところです。

 

終わりに

  このように見ていくと、自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害はちがうものだけれども、いろいろな面でよく似ていることがわかってきます。しかし両者の関係はまだわかっていないことも多いのです。

 では支援する立場からは、今の時点で何に気を付ければよいのでしょうか。残念ながら両者の鑑別や併存例の治療などについて、充分なエビデンスはまだありませんが、自分は以下の3つが特に大切なのではないかと漠然と考えています。

 

 一つは両者の併存があり得ること、その頻度が低くないことを常に念頭におくということです。両者を見分けることに熱心になりすぎるよりも、併存があり得ると考えることの方が、手堅い支援に繋がりやすいと考えています。

 

 二つ目には、併存例の診断、治療のために、自閉スペクトラム症の典型的な発達経過、特に思春期前後の変化を知っておくことが必要です。

 精神科医は平均的な発達の人達が予想された発達の経過を離れることで、統合失調症スペクトラム障害の存在を疑います。それと同じように、自閉スペクトラム症の人達が彼ららしい思春期・青年期の経過から大きく外れたとき、やはり彼らなりの「統合失調症スペクトラム障害」の現れ方である可能性を疑っておく必要があります。そのために自閉スペクトラム症の人達の典型的な思春期・青年期の迎え方を知っておくことが役に立つのではないでしょうか。

 

 三つ目に治療的介入については、これも充分なエビデンスはないのですが、自閉スペクトラム症ではない統合失調症スペクトラム障害の例と比べて、併存例の場合の最大の相違点は、おそらくリハビリテーションと再発予防です。自閉スペクトラム症がある場合、その特性を前提としたリハビリテーション、そして再発防止のための環境調整を考えていく必要があるのだと思います。

 また薬物療法に関しては、これも頼りになるエビデンスはあまりありませんが、急性期には基本的には非併存例と大きな違いはないと考えるべきでしょう。ただし薬物による副作用の出現のしやすさには、違いがあると言われることもあります。自閉スペクトラム症併存例の場合は、少なめの量からややゆっくりと増やす方が、無難であるようには思います。

 

 本当は両者の見分け方のコツとか、併存と考えるポイントとか書いておけるとよいのでしょうが、ちょっと長くなりすぎましたので、このあたりにしておきます。まだまだ研究途上の領域ですが、関心のある皆さんにとって、少しでもお役立ていただけるようでしたら幸いです。

 また筆者は専門の研究者ではなく、特に生物学系の研究者ではないので、あちこちツッコミどころがある文章になっていると思います。誤りがありましたら優しくご指摘いただけましたらありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

参考文献(文中のリンク以外)

成人期の広汎性発達障害 (専門医のための精神科臨床リュミエール)

成人期の広汎性発達障害 (専門医のための精神科臨床リュミエール)

 

 

子どもの発達と情緒の障害―事例からみる児童精神医学の臨床

子どもの発達と情緒の障害―事例からみる児童精神医学の臨床

 

 

 

 

 

 

 

*1:最近では統合失調症とその類縁疾患もスペクトラムを呈すると考えられています。参考記事

*2:大雑把には起こりやすさと考えてください。参考リンク

子どものADHDと大人の「ADHD」 —ダニーディンのコホート研究から—

Neurodevelopmental Disorders Child Psychiatry General Psychiatry

 このツイートに対する反響が思ったより大きかったので、ちょっと記事にまとめてみます。

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心理職国家資格化 法案提出への動き

Psychology General Psychiatry

最近の動向

 久々に心理職の国家資格化の件について大きな動きがありました。また国会への上程が視野に入るような状況になってきているようです。今回(?)の動きについて、ごくごく簡単にかいつまんで並べてみます。
 
平成23年10月2日
3団体(臨床心理職国家資格推進連絡協議会:22団体、医療心理師国家資格制度推進協議会:25団体、日本心理学諸学会連合:45団体)による要望書提出。
 
平成25年4月1日
 
平成25年9月吉日
日本心理研修センター、国家資格化に係る『試験・登録機関』に指定されることを要望
 
平成25年9月19日
精神科七者懇談会より『心理職の国家資格化に関する提言』。
 
平成26年4月21日
『心理職の国家資格化を推進する議員連盟』会長、衆議院議員河村建夫氏が、5月中の法案提出を目指す旨をFacebookページで公表。
 
 大ざっぱにはこんなまとめでよいでしょうか。なんとか今回こそ法案成立までたどり着いて欲しいところです。以下に少し私見を述べてみます。

児童虐待による社会的損失 —日本での試算—

 子どもへの虐待によってどのくらいの社会的な損失があるのかということは、その対策にどの程度のコストをかけるべきかという政策的決断に不可欠なデータの一つです。自分の知る限り、日本にはこれを直接扱った研究がなかったのですが、平成25年12月7日付けの朝日新聞夕刊に虐待による社会的損失に関する記事があり、2012年度だけで1兆6千億円にのぼるという、驚くべき推計が報告されていました。

 

 とても重要な記事だと思うのですが、ウェブ上には情報がまったく挙がっていないようなので、ここでご紹介させていただきます。

 

 追記 今朝になってウェブ上に記事が挙がっていました。

子ども虐待、社会的損失は年1.6兆円 家庭総研まとめ

(朝日新聞 Digital 2013年12月9日)

 

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Book Review 『明日からできる大人のADHD診療』

General Psychiatry Neurodevelopmental Disorders Book Review

奈良市にある「きょう こころのクリニック」の院長、姜昌勲先生から、新刊をご恵送いただきました。どうもありがとうございました。現在はまだ予約注文しかできないようですが、近日中に発送が始まりそうです。

明日からできる大人のADHD診療

明日からできる大人のADHD診療

 

 成人のADHDに関する書籍は多数出版されていますが、診療を行う医師を対象としたものはまだそれほど多くありません。この本は成人を中心に診療を行ってきた精神科医による、おそらくは主にクリニックでの臨床を想定して構成されています。本書はまた医師以外の支援者にとっても、質の高い医療機関でどのようなサービスが提供されるのかを知ることができる内容となっています。

 

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DSM-5 での注意欠如多動性障害(ADHD)の取り扱い

Neurodevelopmental Disorders

DSM-5関連記事の第3弾です。今回は注意欠如多動性障害(ADHD)を取り上げてみたいと思います。以前草稿の段階で,下の様な記事を書きました。

DSM-5 DRAFTでの注意欠陥多動性障害の取り扱い

公開された版でどのようになっているか、確認してみました。

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WHODAS 2.0 ーDSM-5における「V軸」の扱いの着地点ー

General Psychiatry

DSM-5 公開版に基づく記事の第2弾です。ひょっとするとADHDなどを取り上げることを期待しておられた方がいるかもしれませんが、それはきっと誰かが書いてくれそうなので、先になかなか誰も触れてくれなさそうな部分をご紹介します。

 

以前、このブログで DSM-5における「V軸」の扱いー国際生活機能分類(ICF)への接近?ー という記事を公開しました。詳細はこの記事を見ていただくのがよいと思うのですが、多軸診断を採用していた DSM-IV では、機能の全体的評定として、第V軸を位置づけ、GAF (Global Assessment of Functioning)尺度が用いられていました。実はこのGAF尺度による評価は、日本でも診療報酬制度の中で重症度判定に用いられており、経営的な観点からも重視されるというちょっと奇妙な現象も生じていました。

 

今回のDSMの改訂にあたって、前記の記事のように多軸診断は廃止されました。では従来第V軸で評価されていた内容は最終的にどのように位置づけられたのでしょうか。DSM-5 の Section III の冒頭が Assesment Measures という項目なのですが、この中に Cross-Cutting Symptom Measures と並んで WHO Disability Assessment Schedule 2.0 (WHODAS 2.0) が掲載されています。

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