A Fickle Child Psychiatrist

ー移り気な児童精神科医のBlogー

神経発達障害としての冷淡さと非情緒性 〜 Callous unemotional traits をどう考えるか〜

 

 この年末になって、今年一度もブログに記事を投稿していないことに気づいて、慌てて記事を書いています。年末年始に読んでいただくにはあまりふさわしくない内容になってしまいましたが、ご容赦いただければと思います。よい気分のまま新年を迎えたい方には、年明けにお読みいただくことをお勧めしたいところです。

 冷淡で非情緒的 (Callous unemotional) な子ども達

 このエントリをまとめる一つのきっかけとなったのは、年末に American Journal of Psychiatry (AJP) というアメリカの精神医学会の機関紙に掲載された下記の論文です。

The Neurodevelopmental Basis of Early Childhood Disruptive Behavior: Irritable and Callous Phenotypes as Exemplars 

 あえて日本語に訳すと「児童期早期の破壊的行動の神経発達的基盤:易刺激性と冷淡な表現形を例として」となるでしょうか。

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自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害

ツイッターに下記の二つのツイートをしたところ思った以上の反響がありました。

二つ目のツイートのシェーマはこれまでの議論の歴史的経過を大雑把に示したつもりなのですが、なかなか議論も複雑なところなので、ブログの記事に起こしてみることにしました。

 

 この記事を読む前に大事な注意事項を一つ。本当は自閉スペクトラム症も統合失調症のグループの障害も、歴史的には細かく細分化され、ここで紹介している研究もそれぞれ扱っている対象が少しづつ異なっているのですが、読者の方の混乱を避けるために、この記事の中に限って、ほとんどを自閉スペクトラム症、統合失調症スペクトラム障害*1に統一してしまっています。それぞれの研究の詳細についてはリンク先の論文などで確認してください。

 

*1:最近では統合失調症とその類縁疾患もスペクトラムを呈すると考えられています。参考記事

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子どものADHDと大人の「ADHD」 —ダニーディンのコホート研究から—

 このツイートに対する反響が思ったより大きかったので、ちょっと記事にまとめてみます。

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心理職国家資格化 法案提出への動き

最近の動向

 久々に心理職の国家資格化の件について大きな動きがありました。また国会への上程が視野に入るような状況になってきているようです。今回(?)の動きについて、ごくごく簡単にかいつまんで並べてみます。
 
平成23年10月2日
3団体(臨床心理職国家資格推進連絡協議会:22団体、医療心理師国家資格制度推進協議会:25団体、日本心理学諸学会連合:45団体)による要望書提出。
 
平成25年4月1日
 
平成25年9月吉日
日本心理研修センター、国家資格化に係る『試験・登録機関』に指定されることを要望
 
平成25年9月19日
精神科七者懇談会より『心理職の国家資格化に関する提言』。
 
平成26年4月21日
『心理職の国家資格化を推進する議員連盟』会長、衆議院議員河村建夫氏が、5月中の法案提出を目指す旨をFacebookページで公表。
 
 大ざっぱにはこんなまとめでよいでしょうか。なんとか今回こそ法案成立までたどり着いて欲しいところです。以下に少し私見を述べてみます。

児童虐待による社会的損失 —日本での試算—

 子どもへの虐待によってどのくらいの社会的な損失があるのかということは、その対策にどの程度のコストをかけるべきかという政策的決断に不可欠なデータの一つです。自分の知る限り、日本にはこれを直接扱った研究がなかったのですが、平成25年12月7日付けの朝日新聞夕刊に虐待による社会的損失に関する記事があり、2012年度だけで1兆6千億円にのぼるという、驚くべき推計が報告されていました。

 

 とても重要な記事だと思うのですが、ウェブ上には情報がまったく挙がっていないようなので、ここでご紹介させていただきます。

 

 追記 今朝になってウェブ上に記事が挙がっていました。

子ども虐待、社会的損失は年1.6兆円 家庭総研まとめ

(朝日新聞 Digital 2013年12月9日)

 

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Book Review 『明日からできる大人のADHD診療』

奈良市にある「きょう こころのクリニック」の院長、姜昌勲先生から、新刊をご恵送いただきました。どうもありがとうございました。現在はまだ予約注文しかできないようですが、近日中に発送が始まりそうです。

明日からできる大人のADHD診療

明日からできる大人のADHD診療

 

 成人のADHDに関する書籍は多数出版されていますが、診療を行う医師を対象としたものはまだそれほど多くありません。この本は成人を中心に診療を行ってきた精神科医による、おそらくは主にクリニックでの臨床を想定して構成されています。本書はまた医師以外の支援者にとっても、質の高い医療機関でどのようなサービスが提供されるのかを知ることができる内容となっています。

 

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DSM-5 での注意欠如多動性障害(ADHD)の取り扱い

DSM-5関連記事の第3弾です。今回は注意欠如多動性障害(ADHD)を取り上げてみたいと思います。以前草稿の段階で,下の様な記事を書きました。

DSM-5 DRAFTでの注意欠陥多動性障害の取り扱い

公開された版でどのようになっているか、確認してみました。

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